ICOですよ!

こないだ、あまりの熱帯夜に夕食後なにもする気にならず、気分転換に本屋に行きました(近所の本屋が11時までやっているのだ)。とくに目当ての本があるわけでもなかったんですが、何か買わないと帰れないような気分だったので、はたと目に付いた「ICO」(宮部みゆき・講談社)を手に取りました。前から何度か本屋で見て気にはなっていたので、よい機会だったのです。

実は俺様、推理小説嫌いなもんで、宮部みゆきって初めてです。ゲームのノベライズもおそらく初めて。今回はICOのパッケージ背面に宮部みゆきのコメントが載ってたくらいなんで、ハズレはないだろうと購入に踏み切りました。いやー面白いですわ。途中オリジナルの話が続くところは好みが分かれそうですが、ゲームとリンクした描写は見事の一言。すっかり過去の記憶と化していた霧の城の風景がありありと浮かび上がって、思わずもういっぺんやっちゃったくらい。んで小説の描写と比べてみたり。実は展開とか大きく変わってるんですが、しっかりとゲームから想像を膨らませてる感じで、雰囲気というか魂というか、根っこの部分でゲームをやってたときと同じドキドキが味わえるのです。ICOファン必携の書ですな。

で、ICOをやったことがないっていうそこのあなた。PS2を持ってる価値三割減です。いやマジで。そもそも3DCGってのは本来こういうアドベンチャーゲームのためにあるのですよ。「城」という舞台そのものが強敵として立ちはだかるからこそ、その存在感が生きてくるわけじゃないですか。段差を上り、扉を開け、時には部屋の構造を変えて先へ進んでいく面白さ、隅々まで目を凝らしてギミックを探す緊張感、複雑な部屋を抜けて、目の前に道ができたときの開放感と達成感は昔ながらのアドベンチャーに最高のCG技術という組み合わせでなければ味わえないものです。しかもICOはただのアドベンチャーじゃあない。そこには一人の少女がいるのです。

かつてアドベンチャーの楽しさとは、だだっ広い世界にたった一人で放り出された孤独感とかなり密接な関係にありました。孤独から逃れようとするからこそ、プレイヤーは何とか道を造り、世界から脱出しようとする。「孤独からの脱出」というテーマは普遍的な面白さを持っており、これを題材にしたアドベンチャーやRPGはたくさんあります。そして、ICOにおいて、プレイヤーは霧の城という孤独から脱出します。一人の少女の手を引いて。これほどヒロインが光り輝くシチュエーションが他にあるでしょうか。プレイヤーのそばにいるのは少女ただ一人であり、少女を救えるのはプレイヤーただ一人。すぐそばに孤独が口を開けているからこそ、「絶対にこの手を離さない」という気持ちがわいてきます。主人公に比べれば何も出来ないに等しい少女は、足手まといと言ってしまえばそれまでですが、決してそんなものではない、むしろ先へ進む原動力ともいえる大事な宝物となっています。

3DCGによって「世界」をリアルに作り上げ、物語を最低限に絞ってプレイヤーを放り出したICOは、アドベンチャーゲームの正統的な進化の形ということができます。アドベンチャーゲーム共通の欠点である、先に進めないときにひたすらストレスがたまる感覚はありますが、そのぶん道が開いたときの開放感はかなりのもの。物語を補うに十分な想像力さえあれば、どんな人にも自信を持ってお薦めできます。あ、ただし高所恐怖症の人と心臓の弱い人はやらない方がいいでしょう。
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by kabehouse | 2004-07-12 14:35 | ゲーム
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