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驚異のマルチヒーローシステム

週刊少年サンデーから少年マンガの面白さを探り続ける壁ハウス、今週のテーマは物語を面白くもつまらなくもする諸刃の剣、「マルチーヒーローシステム」(以下MHS)です。このMHS、初めて聞いたという方がほとんどだと思います。俺様が勝手に名付けたんだから当然です。というかここで使ってる聞き慣れない言葉の数々は、ほとんど俺様が勝手につけた名前です。「ヒロイン研究」の方は、一応諸々の資料を参考に、最も一般的に使われている言葉を選んで書くようにしてますが、「少年サンデー」カテゴリの文章はそのへん適当にやってますので、遅ればせながらご了承ください。

前置きが長くなりましたが、このMHS、読んで字のごとく「複数のヒーローを登場させることによって、一人のヒーローが複数の役割を持つ」システムです。一番わかりやすい例はキン肉マン。最初ライバルとして登場したロビンマスクはその後ヒーローとしての活躍を経て親父キャラに落ち着いてましたし、ウォーズマンは途中からほぼヒロイン役。「七人の悪魔超人」編では、主人公であるはずのキン肉マンが負傷してヒロインに近い役をし、他の正義超人がヒーローとしてそれぞれ活躍するという構造が生まれました。ぶっちゃけた話「仲間」です(ぶっちゃけすぎ)。

キン肉マンの例でもわかるとおり、一番わかりやすいMHSは「仲良し三人組」とか「五人戦隊」とか「光の武者七人集」とかいうグループを成すもの。サンデーでいうと「うえき」と「メル」、あと今週から始まった短期集中連載「絶対可憐チルドレン」がこれにあたります(「ガッシュ」は後述)。何かというと主人公以外のキャラを戦わせたがる現在の漫画界においては、この数は少ないほうだと思います。今週みたいに、いきなりアノンVS李崩!とか言われると、やっぱりワクワクしますよね。ヒーローが多いってやっぱいいなあ、と思ってしまうわけです。始まったばかりの「東遊記」や「クロザクロ」にも、魅力的なヒーローが増えれば、それも面白そうだなあ、と。

ところがどっこいそこに存在する落とし穴。このタイプはやりすぎると主人公の存在感がなくなって、ストーリーがぼやけてしまいます。どこぞの忍者漫画みたいに、新章突入のたびにそれぞれの背景を描いて戦う理由を説明して、その上で戦闘シーンを絡めて…なんてことをやってたらページがいくらあったって足りません。ぼやけて当然です。やるなら「絶対可憐チルドレン」(長いね)のように、はっきりした主人公を一人作って、他のヒーローは背景設定をシンプルにして、ある程度役割も決めてくれた方がいいです。いつもは偉そうに見てるだけのキャラがたまに本気で戦ったりするからこそ面白いわけですし。いくら仲間とはいえ脇役は脇役、出しゃばってはいけません。今週の利守のように、仲間はさらっと描いて主人公で勝負する「結界師」や「MAJOR」(あと「コナン」とか「犬夜叉」とか「からくり」とか)、一見脇キャラが活躍しているように見えて林田なしでは成り立たない「いでじゅう」、波戸さんや百舌鳥さんを格好良く描きつつも斑鳩悟が出てきた瞬間さらにギアが上がる「D-LIVE!!」などの例からも、ヒーローが多けりゃいいってもんでもないことがわかるでしょう。

さてここからが新基軸、真のMHSとも言うべき主人公二人制、「ガッシュ」および「道士郎」の登場です。これまで見てきたMHSが主人公+仲間たちという構図をとっていたのに対して、「ガッシュ」のガッシュ&清麿、「道士郎」の道士郎&健助は、もはやどっちが主人公かの区別が難しい。特に「ガッシュ」。こうなるともはやヒロインなど無用で、ガッシュは清麿のために強くなり、清麿はガッシュを強くするために戦う、という強固な絆が生まれています。タッグという構図自体は過去にもあったものの、基本的にはどっちかが主人公でもう一人はサポート、という形ばかりだったので、ガッシュの肉弾戦と清麿の頭脳戦、というタイプの違う戦いが同時に行われる「ガッシュ」の構図は、全く新しい魅力を生み出しているわけです。「道士郎」も、ずっと健助の活躍が目立ってましたが、もっと道士郎が活躍して道士郎ママとか道士郎兄とか巻き込んで、はちゃめちゃな騒動を展開してくれたら、新たな魅力が開けるかもしれない、と注目しております。

このMHS、使い古されているようで、実はまだまだ秘めたパワーを持ってるんじゃないかと俺様は考えております。ですが、絶対やらなきゃいけないってもんでもない。先に述べたとおり、ヒーローは一人でも十分奥が深い世界が作れます。ただそこを無理矢理増やすことで別の面白さが得られることがやはりある。「はじめの一歩」と「KATSU」は全然違うけど、どちらも面白いよね、と俺様は言いたいのです。

おっと、忘れるところだった。今週の一コマは「結界師」より106ページ1コマ目、「おう利守、おかえりー」の瞬間の良守。とその瞬間の利守。この単純化された線一本一本にこもる何かが漫画を支えているのです。
by kabehouse | 2004-08-26 13:14 | 少年サンデー
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