カテゴリ:本棚( 15 )

愛人[AI-REN]で、泣く

田中ユタカの「愛人[AI-REN]」(白泉社刊、全五巻)を買いました。雑誌連載の終了が2002年の5月。それから2年あまり経った今、ようやく完結巻が出ました。俺様は単行本が六巻を越すと急速に揃える気をなくすため、全巻出てから買う、という非道い男であり、また載っていたヤングアニマルという雑誌に当時馴染みがなかったこともあって、友人と話題にはしていたものの、未購入でした。んで今回ようやく全巻そろいで購入と相成ったわけですが、実際買ってみると、一発で惚れました。もう何度読んでも途中で冷静な分析力をなくしてしまうので、しかたなく今書ける限りのことを書きました。結果、あまりに長く、統一感がなく、しかも読みにくいものになってしまったため(俺様倒置使いすぎ…)、Moreに入れます。ネタバレとかは全然ないので安心して読んでください。

ま、大半はあとがきに描いてあることですから、こんなの読むくらいなら一刻も早く買って読んだ方が良いかもしれません。そのときは一巻ずつ買い集めることをおすすめします。少しずつ、先を気にしながら、また前を思い起こしながら読み進めていくというのは、良質なマンガでしか味わえない幸福な読み方ですから。

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by kabehouse | 2004-10-05 13:18 | 本棚

バーチャル本棚

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日ごろからよく通っている「Yagi's Pastureland」さんとこで面白いものを発見。「せめてバーチャルでも書庫が欲しい」
というわけで、トラックバックです。「ブクログ」にあるJavaを使ったバーチャル本棚で、アマゾンとの連携でISBNコードを入力するだけで本棚に本が置けてしまう、というもの。しかも他人のレビューも出てくる。こりゃ面白いってんで俺様もさっそく作りました。
kabeの本棚
家にある漫画(だけ)の中から、現役で家に全巻揃ってるものだけを選んだんですが。しかも1巻(もしくは画像があったやつ)しか置いてないんですが。何でこんなに多い?結構人にあげたりしたから少なくなってるはずなのに!大丈夫か我が家?

ちょっと本棚をのぞいてみて、気になるのがあったら言ってください。レビューするかも。
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by kabehouse | 2004-09-30 18:27 | 本棚

ヘビーな二冊

最近読んだ本の中からヘビーな小説を二冊紹介。一冊は「おおとりは空に」津本陽・講談社文庫。もう一冊は「神様のパズル」機本伸司・角川春樹事務所。かたや幕末を舞台とした時代小説、かたや宇宙創生をテーマとした本格派SFと、おそろしく毛色が違う二作品ですが、非常にヘビーで読む人を選ぶ、よってなかなか他の人にお薦めできないという共通点があるので、まとめてご紹介というわけです。

「おおとりは空に」は、緊張感あふれる殺陣描写で剣豪小説というジャンルを切り開いた津本陽が、裏千家11代家元玄々斎宗室の生涯を描いた作品。なのですが、壮大とか激動とかいう言葉がまったく似合わない。誕生や死、結婚あるいは出世などの事件があまりにもあっさりと、時にはほんの一言ですまされ、代わりにたいしたことのない日常の風景が丹念に描かれていきます。とくに大きな割合を占めるのが茶会の次第を一つ一つ並べていく記述。門外漢である俺様にはさっぱりわからない茶道具の名前がずらっと並び、正直お手上げ状態。他の部分も、重大なはずの事件があまりにもあっさりすまされるのでずっと違和感がぬぐえずにいました。ところがあるとき、はたと気づいたのです。「リズムがぜんぜん違う」と。この小説はおそらく、江戸後期の大名のリズムで書かれている。そのため、たとえ親が死んでもそれは距離的に離れた実家の出来事であり、一通の知らせで終わってしまう。それよりは長い日常の細かな出来事が心中の大部分を占めているということなのでしょう。だから読むほうも大名の心持ちで、ゆったりと、茶器同様に言葉を一つ一つ愛でる感覚で読み進めねばならないのでした。気づいてからも、リズムを意識的にゆっくりととるのは骨が折れる作業でしたが、多少は魅力が掴めたように思えます。あとヒロイン研究家の視点では、正室まち子が秀逸。限られた描写でもここまでかわいく書けるものかと舌を巻きました。

「神様のパズル」は、物理を学ぶ学生が、「宇宙の作り方」を通して物理学の根本を問い、人のあり方を考えていくという、聞いてるだけでめまいがしてくるようなSF。正直読みづらいし、ひねりが足りない感じはしますが、宇宙は作れるのか、物理学とは何なのか、人はどう生きるべきかという根源的な問題に、きっちり答えを出したという点で、これまた舌を巻く作品です。物理の専門用語続出で、量子力学をかじったことのある人でないと相当つらい、というかオチがわからないと思いますが、本格的なSFが好きな人なら楽しめるでしょう。

で、「神様のパズル」を読んでいてもうひとつ二作品の共通点を見つけました。主人公が「弱い」という点です。物語というものは、キャラクターというフェライト磁石の動きを見ているようなもので、極性によってキャラクター同士引き寄せあい、あるいは反発し、磁力の差が大きいと片方がひっくり返ってくっついたりします。本来主人公とは大きな磁力を持った人物であるべきですが、幕末の大きな流れの中で茶道に一生をささげる玄々斎といい、天才少女に謎解きを任せてなぜか一人農作業をしている綿さん(「神様のパズル」の主人公)といい、この二作品の主人公はどうにも磁力が弱いのです。ですが、両方ともじっくりと丁寧に描写をすすめていくことによって、弱さは逆に魅力的になります。特に「神様のパズル」では、主人公のふがいなさが、壮大なテーマをそのまま打ち破っているようで、最後の最後でちょっと爽快です。他人をひっくり返して引き寄せるような真似はできなくても、ちょっと方向を変えるくらいならできる。そして、その少しの方向転換が人を救うことがある。なぜなら人は本来自分を救う力を持っているのだから。そういう小説です。

専門知識がないと本気できつい上、小説を読む力を相当必要とする二作品です。でも、この作品でなければ味わえない感覚があります。壁は高いほど燃えるという、読書家としては珍しい方にならお薦めできる…かな…?
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by kabehouse | 2004-07-17 15:39 | 本棚

サムライジですべてを忘れる

今日も本屋で漫画を漁る俺様。BECK19巻エディ・リー追悼エディションもモチのロンで手に入れましたが、それと同時にサムライジ最終4巻を手に入れましたので、ここぞとばかりにサムライジ(秋田書店チャンピオンコミックス、原作倉田英之、漫画山田秋太郎)をご紹介するのであります。

このサムライジというマンガ、正直面白くはない。かといって面白くないとも言い難いという困った奴なのであります。実際打ちきりです。あとがきにも書いてありますが、未消化の部分が多すぎです(結果として1巻の表紙が主人公とチョイ役のツーショット)。それでも、そんなことはどうでも良いと思わせてしまうマンガです。スクライドを知っている方ならそれに近い感覚です。ってスクライド知ってるならサムライジも知ってるわな(爆)。連載時に一、二話を読んだときには「おお、これは久々に面白いのでは?」と思わせたんですが、知らないうちに終わっていた、良くも悪くもチャンピオンらしいマンガです。

まずは主人公の斬山斬十郎(名前がすでに…)なんですが、最初は「この地味な主人公、なかなか絶妙な大人っぽさなんでないかい?」と思っていたら、どんどん幼くなっていって、6話目あたりですっかりガキんちょに。1巻買ってページめくったときには思わず「誰やねん」と言いましたよ、俺様は。で、敵に向かっていって石につまずいてこける。戦闘シーンは格好良いのに、戦う前の構えが変。最終話の決めポーズがもっと変。にも関わらず、言うことがいちいち格好良い。やることなすこと格好良い。格好良すぎ。もう格好良いからいいや、みたいな感じです。

もともと主人公がこんなんですから、展開もえらいことになってます。敵役のセブンはパワーアップして超(ウルトラ)セブンになる(しかもキラキラしてる)わ、親父は強すぎだわ、徳川光圀は「ミッキーと呼んでくれッ」とか言い出すわ、主人公は月まで行くわ、巨大化するわ、増えるわ、チャンピオンのマンガに慣れてない人なら腰を抜かすんじゃないかというくらいのぶっ飛び方。上から下までケレン味のかたまり。チャンピオンならではの微妙な下ネタとか、読めない当て字とか、気にするのも馬鹿らしくなって、もうどうでもいいや、お前らステキだから許す、という気分にさせてくれます。

なんかもう少し言いようがあるような気もするんですが、読めば読むほど何でもよくなってくるんで、このへんにしときます。自分で楽しむのはいいけど、あんまり他人に薦めたくはならない、そんなマンガです。話のネタにでも1巻を読んでみて、主人公が出てきたら「誰やねん」と言いましょう(笑)。最後にひとつ、1巻だけ読むとアホみたいに面白いです。
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by kabehouse | 2004-06-18 11:49 | 本棚

クロノアイズで空想科学の心を燃やす

クロノアイズ全6巻+クロノアイズグランサー全3巻は、講談社マガジンZKCから発売されている長谷川裕一のSFマンガです。久々に手に取ったら一気に読み返してしまったので、ここで紹介します。

クロノアイズはSFの王道、タイムトラベルを扱ったマンガです。主人公は時空監視機構(タイムパトロールと呼ぶと怒られます)『クロノアイズ』の一員となり、巨大人型兵器『ペルセディア』を駆って、歴史を改変して未来を支配しようとする組織『ハデスサイズ』と戦います。正直、なんてベタベタな設定だろうかと思います。ところがどっこい、これがメチャクチャ面白い!まずはペルセディアが綺麗だわ格好良いわ可愛いわ。加えてエピソード一つ一つが王道をふまえつつも新鮮で、バージェスモンスターに恐竜人間(羽毛つき)にアポロ11号にアトランティス、とSFファンも納得のラインナップ。本筋となるタイムトラベルの理論と、それにまつわるドラマも、しっかり練り上げられていて読み応え十分。もちろん長谷川裕一といえば日本で三番目にスケベな漫画家ですから、サービスシーンも満載。これぞ空想科学の情熱、読まなきゃ損ってもんです。

かくして俺様ランキングSF漫画部門で不動の一位を確保したかに見えたクロノアイズでしたが、これをあっさりと抜き去るマンガが現れました。それがクロノアイズグランサー。たまげました。クロノアイズの続編です。つまり、タイムトラベルと『クロノアイズ』にまつわる謎はすでに解かれ、巨大な敵『ハデスサイズ』はもうありません。それでも断言できます、グランサーはクロノアイズより面白い。敵のロボット、ティアドロップなんか格好良すぎですよ。続編とは本編よりも面白くなりうる、いや面白くなければならないものなのだということをはっきりと示した希有な作品です。

SFとは何かを説明するのは非常に難しいことです。巨大ロボも、宇宙船も、タイムマシンもSFの要素ではありますが、それらを出しただけでSFを名乗ることはできません。でも、だからといってSFを楽しむことまで難しいものにすることはないと思います。現にクロノアイズ、そしてグランサーという作品があり、難しいことを言わずとも涙が出るほど面白くて、格好良くて、そして間違いなく空想科学なのですから。
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by kabehouse | 2004-06-15 14:41 | 本棚